里山の風景が広がる七尾市中島町釶打地区。この地に鎮座する藤津比古神社は、地域の人に「新宮(しんご)」の名で親しまれています。暑い夏、神様に夕涼みを楽しんでもらおうと始まった新宮納涼祭は、「新宮(しんご)のう涼み(うすずみ)」とも呼ばれています。
釶打地区ではキリコを「お明(あ)かし」と呼び、祭りには8つの集落から毎年10基前後が出されます。能登のキリコの明かりも電灯が主流になっている中で、「お明かし」は今もろうそく。夜道を揺れながら進む明かりは、遠目で見ると電灯との違いが際立ちます。暗闇に溶けこんでしまいそうな儚(はかな)げな美しさに夏の暑さも薄らいでいくような気がします。
新宮納涼祭はお囃子にも特徴があります。笛は使わず、太鼓と鉦を独特のリズムで打ち鳴らし、祭り唄「やんさこ」が歌われます。藤津比古神社に勢ぞろいしたキリコは、祭り唄にあわせて境内をゆったりと練り歩いた後、神輿を先頭に「水落とし」と呼ばれる熊木川右岸にある広場に向かいます。「水落とし」では、神輿を中心に大小のお明かしが横一列に並び、その眺めは壮大で見応え十分。
やがて、鉦と太鼓の音が高鳴る中、順番に円を描いて何度も力強く乱舞すると、対岸で見守る人達から歓声が上がります。ろうそくのゆらめく炎が幻想的な雰囲気を醸し出す夏祭りです。
能登の里山、熊木川中流域に静かに佇む釶打地区。祭りの日、深夜まで家々の灯りがともる中、キリコの行列が太鼓と鉦の囃子に合わせてお旅所の「水落とし」へ巡行する。ろうそくの灯りがゆらめき、祭り唄「やんさこ」が情緒を醸し出すその風情は、この地独特で郷愁を誘う。一度見ると忘れられない祭りだ。
石川県観光
スペシャルガイド
藤平 朝雄 さん
能登半島広域観光協会相談役。
元キリコ会館館長。
●昔ながらのろうそくの明かりに風情漂うキリコ
●「水落とし」でキリコが横一列に並ぶ壮観な眺め
●優美な祭り唄「やんさこ」でお練り
開催日/8月14日
場所/七尾市中島町藤瀬
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問い合わせ/七尾市 商工観光課
☎0767-53-8424